現在、宝塚市出身の人気イラストレーター中村佑介さんの展覧会『中村佑介 in TAKARAZUKA 2025』が、宝塚市立文化芸術センターで7月21日(月・祝)まで開催されています。

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先日のブログでは展覧会の内容をお伝えしましたが、

今回はオープニングセレモニーとテープカットの様子、
そして中村佑介さんにインタビューをさせていただきましたので、そちらをお届けいたします。


『中村佑介 in TAKARAZUKA 2025』オープニングセレモニー・テープカット

「故郷に錦」を。宝塚市で展覧会ができることを嬉しく思う

高校生時代、「イラストレーターを目指し美大の大学受験のために、阪急電車に乗って大阪の画塾に通っていました。ぼくにとって辛かった時期とちょうど重なっていて思い出が作れなかったんです」とのこと。

「この度、こんな形で故郷に錦をかざらせていただくなんていいのかな」とおっしゃられつつ、「宝塚出身でよかったな。今こうやって宝塚で展覧会ができることをすごく嬉しく思います」と笑顔で語ってくださいました。

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中村佑介さん(左)と森麟太郎宝塚市長(右)


『宝塚ファミリーランド』のホワイトタイガーは僕の絵の中で生きている

「ちょうどこの場所は『宝塚ファミリーランド』の動物園があった場所ですよね」と思い出を振り返えられ、
「白い虎をずっと昔から描いています。子供の頃に見て、誇りに思っていました。『宝塚ファミリーランド』にホワイトタイガーがいるというのは、この地域に暮らしていた人がみんな見て知っていたこと」
「ファミリーランドはもうなくなってしまいましたが、何匹か白い虎が僕の絵の中では生きていますので、ぜひご覧いただければ」とおっしゃられていました。

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テープカットの様子


中村佑介さんインタビュー

ホワイトタイガーのイラストを現代のお散歩スタイルに

「この絵はもとの絵があったんです。宝塚の思い出があるのでホワイトタイガーを描いてるんですけど、昔の犬の散歩って今とはだいぶマナーが違っていたじゃないですか、当時の感覚のままの散歩イラストを、今回そのまま出すのはよくないなと思って。

急遽、一昨日くらいに描いたんですよ。パネルの挨拶文を書いているときに、こんなに思い入れがあるみたいなことを書いてるのに、20年くらい前の絵を使い回すなんてめちゃくちゃ冷たいやつだな、と自分のこと思っちゃって笑。」

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展覧会の入口に展示されている挨拶パネル
首輪がハーネスに、処理袋だけでなくお水が追加されるなどブラッシュアップ


子供の頃から絵を描くことしかなかった

「子供の頃から絵を描くのは好きですね。好きというかそれしかないっていうか。

今はこうやって人と話せますが、幼い頃は親も心配するくらい言葉をあまり発しない子どもだったんです。
その延長線上で、僕は人と話すコミュニケーションっていうものに対しての優先順位が高くなく、話さなくていいなら話したくないなと思ってて。
そうするとやっぱり一人の時間が多くなり、絵がうまくなっていって…。
みんなでドッジボールをするより、学校の先生の似顔絵を描いて笑わしたりする方が楽しい。そんな感じです。

そんな中、小学生の頃にちょうどジャンプ黄金世代がきたり、ビックリマンシールが流行ったり、テレビゲームだったり…、そういった絵の文化みたいなものに憧れを持つようになって、将来仕事にしたいな、と思うようになっていきました。

当時、父も母も絵に関係する仕事をしていたので、非現実的なことではなかったんです。
それにむかってずっと頑張っていました。」

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絵は自分の椅子を見つけるための生きる術

「好きだから描いてたというか、学校でポジションを持ちたい、『この子はお金持ち、この子はかっこい、この子は勉強できる…』とか。そういう生きる術として描いていました。

子供にとって学校は社会じゃないですか、僕は自分の椅子を見つけられなかったので、絵を描く椅子にかじりついていました。
そうすると卒業文集のときに、『みんなの似顔絵描いて』とか頼まれたりして。
そこで自分はようやく“そこにいていいんだよ”と安心感を得られるという感じでした。

だからすごく楽しく無邪気に絵と対峙してきた経験がそんなにないんです。

漫画の真似を書いたりしたけど、その時もどうやったら漫画家先生のアシスタントになれるのかな、とか子供なりに考えたりして。
楽しくてやってるわけじゃなくて、もっとうまくなれなきゃプロになれない、とずっと思っていました。必死だったんです。」

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絵を描いて届けることで社会のパスポートをいただいてる

「今は感謝。僕は絵が描けるから社会の一員として入れてもらっていると、思っています。

近所にこの人何しているんだろう?みたいな、平日の昼間からぶらぶらしている40代の男性とかいないですか? 僕、それなんですよ笑。

世間の人が出勤する時間帯に僕はわんちゃんのお散歩をしているんですけど、近所の人から見たら『あの人一体何をやってる人なんだろう?』って思うじゃないですか。それがわかるから、僕は自分から積極的に挨拶していくんです笑。

僕は他の人が書けない絵が描ける代わりに、商品や作品をビジュアルにしてお届けするという仕事、社会のパスポートみたいなものをいただいていると思っているので、そこに答えないといけない。気が抜けないんです。社会からの信頼感が重要だと思っています。

『絵を描くのって楽しいんですか?』とか『仕事にすると楽しくなくなりそう』とか言われると、何を言っているのかなって感じます。
どうしてあなたの楽しさに社会が付き合わないといけないの?と。

自己表現だけはなぜか他の人が見ないといけないもの、みたいになっているのがどういうことなのかなと僕は思います。

絵でいう作家性や個性は、他の人とどれだけ違うや、社会性のなさにもつながっていると思うのですが、社会がそれ求めているし、許してくれいている。

僕はそのあたりを勘違いせず、自分が偉いと思っていない。
社会から親切にしてもらって生きているという感覚なんです。」

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赤色の使い方と女性像

「初期作品の赤色の使い方についてですが、特に赤にこだわりはないんです笑。
当時は表現者になりたいわけではなく、絵の仕事をして、学校とか社会の中にいていいんだよ、っていわれている自覚が持ちたかった。社会的に認められたい、というか。

その最初のプロモーションとして、目につかせることが重要だなと思って。
色々やった中で、白黒で漫画のように表現して赤一色だけでで成り立たせるというのは、目に飛び込んでくるんですよね。当時描いていた、青春時代に持っている自意識のどろっとしたテーマに合うと思ってよくやっていました。
ちなみにほんとに好きなのは黄色です笑。


作品の女性にはモデルはいない、つくっちゃいけないと思っています。
広告なので僕が描いているけど僕の作品ではない。

僕にとっての人物画は、どんな人がみても、ある程度自分に近しいものを覚えてもらうための入口なんです。トイレのマークや信号機と同じ。
わりと具体的な中での匿名性、クラスに三人ぐらいこういう人いたな、という人物像が描けたらいいなと思いながら描いています。」

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赤色の使い方が印象的な初期作品「セーラー服コンプレックス」


宝塚市での展覧会は最終回

「この人もう亡くなっているんじゃないの?というくらいの物量と値段、生きている個人の商業イラストレーターでこの規模の展覧会は他にはないですよね。
あまり絵に興味がない人が連れて来られても、さすがに見応えあったねという展覧会になってます。なので気兼ねなく誘って来ていただいて大丈夫です。

僕に興味ある方の中にも、僕が手書きでやってることを知らない方も多い。
円の中央に当たり前のようにコンパスの穴が空いてる、とかみたら感動するのではないでしょうか。そういうのを見るためにも来る価値があると思います。
今正円をコンパスで描いている人、他に誰がいます?笑

手で描くのが早く正確、身の丈にあってるなと。
デジタルは自分ができないこともできてしまう、背伸びをしてしまう。

きれいな線が引けなくても線を補正してくれる。それって中和されているってことじゃないのかなって。僕はその中和は見たくなくて。
剥き出しのその人自身、その人のガタガタも見たい。印刷物なのに温度を感じるのは、そのガタガタのことだと思うんです。


宝塚市での展覧会は“最終回”ですよね笑。
作家として、地元で認められる、市で展覧会を開催してもらうというのは、
究極的、社会的な認められ方だと思うんです。

一番美しいストーリーって、この後僕が絶命するっていう笑。
でも僕は長生きして何度でも展覧会を開きたい、僕の展覧会は宝塚でしか開かない!それくらいの気持ちです。」

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この他にも、初めて宝塚歌劇を観劇したのは雑誌のぴあ企画で27〜28歳のとき、手塚治虫記念館にはカプコン展でストリートファイターのイラストを描かせていただいた際に訪れた、他にはないマニアックでマイナーなゲームをやるために宝塚南口のサンビオラのゲームセンターに通っていた、修学旅行に行っている時に阪神大震災があり、旅行から帰ってきたら街の様子が激変していて衝撃だった、など宝塚でのエピソードも聞かせてくださいました。

中村佑介さん、貴重で興味深いお話をたくさんお話しいただき、ありがとうございました。

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『中村佑介展 in TAKARAZUKA 2025』概要
会期:2025年4月25日(金)~7月21日(月・祝)
会場:宝塚市立文化芸術センター 2階メインギャラリー
住所:兵庫県宝塚市武庫川町7-64
休館日:毎週月曜日(祝日の場合は開館。翌平日休館)
開館時間:10:00~18:00(メインギャラリーへの入場は17:30まで)
入場料:一般 1,400(1,000)円、高校生以下 900(500)円、
     グッズ付き一般 1,700(1,300)円
     グッズ付き高校生以下 1,200(800)円、
     宝塚市文化財団友の会「タカラティエ」グッズ付き 800円
価格は税込/()内は前売料金/未就学児無料/兵庫県内の小・中学生はココロンカード、のびのびパスポート提示で無料

※障がい者と同伴者1名は無料。入場時に障がい者手帳を提示。
※グッズ付きチケットは数量限定。
※「タカラティエ」はグッズ付きチケットのみの販売。
※展覧会期間中でも前売りチケット取扱所で前売り券を購入可能。
※グッズ付きチケットのグッズは、展覧会場にて入場時に配布。

<前売りチケット販売概要>
販売期間 :2025年3月22日(土)~2025年7月21日(月・祝)
窓口販売所:宝塚ソリオホール宝塚ベガ・ホール(水曜休館)
       宝塚文化創造館 (月曜休館)
       ※いずれも前売りチケット販売は9:00~17:00。
オンライン:GETTIIS、ローソンチケット Lコード:54394
       ※最終日は15時まで購入可能。


<各イベントの申し込みなどの詳細>
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以上、宝塚市の情報をお届けする『宝塚コミパ通信』MAでした。


『中村佑介展 in TAKARAZUKA 2025』HP
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宝塚市立文化芸術センター
兵庫県宝塚市武庫川町7-64